2024年8月22日木曜日

解説:楽器グラスハープの原理と構造

1.グラスの配列
 グラスハープの配列は、プレーヤーによってそれぞれ異なる配列が用いられている。ここでは、代表的な配列を列記することにする。

図1、グラスの配列

1)ホフマン型配列
 グラスハープの配列で最も単純な配列はピアノ鍵盤配列であろう。鍵盤楽器になれている演奏者にとってはこれが最も取り組みやすいが、ハーモニーや和音の演奏が困難なことや、多くの音階をカバーしようとすると楽器が長くなって、運搬やセッティングで支障が生ずる。
 これに対しして、20世紀半ばに活躍した唯一のグラスハープ奏者、ブルーノ・ホフマン(Bruno Hoffmann、1913ー1991、ドイツが使用していたグラスハープは、長方形の木製の箱の中にグラスを並べたもので、これをホフマン型配列(長方形配列)と呼ぶことにする。この配列は、まず下から上へ向かって半音(短2度)ずつ上げて並べ、続く半音上の音を右隣の下段に並べ、以下同様にこれを繰り返すものである。右隣が長三度、右斜め下が短三度、上が短2度の関係にある(図2)
 なお、ホフマンは1968年来日し、上野文化会館小ホールでコンサートを行った。佐々木は、文化会館でホフマンの演奏を視聴している。


図2、ホフマン型配列


2)ティソ型配列
 イタリアで活動しているロベルト・ティソ氏(Robert Tiso、ロンドン出身、現在ピサ在住)が使用している配列(長方形配列)である。上から下へ向かって半音(短2度)ずつ上げて並べ、続く半音上の音を右隣の上端に並べて更に続け、これを繰り返すものである。その結果、右隣が短三度、右斜め下が長三度、下が短2度の関係となる(図3)。 


図3、ティソ型配列

3)グラス・デュオ型配列
初期のグラス・デュオはピアノ鍵盤型配列を使用していた(息の合った見事な演奏「アニトラの踊り(GLASS DUO Anitra's Danceで検索)」が秀逸!)が、3m以上にもなる長い配列が不便だったのか、間もなく現在の配列に変更した。
 ポーランドの首都グダニスで夫婦で活動しているグラスハープユニット、グラス・デュオ(アンナ&アルカディウシュ シャフラニエツ夫妻、Anna & Arkadiusz Szafraniec)が使用している配列(平行四辺形配列)である。上から斜め下へ向かって半音(短2度)ずつ上げて並べ、続く半音上の音を右隣の上段に並べて更にこれを繰り返すものである。その結果、右斜め上は長二度、右隣が短三度、斜め下は短2度の関係となる(図4)。類似の配列としてボタン・アコーディオンの配列があるが、それを上下逆さまにするとグラス・デュオ型配列となる(図5)。

 

図4、グラス・デュオ型配列



図5、ボタンアコーディオン型配列

 なお、ウクライナ出身のグラスハープ・ユニット、「クリスタル・トリオ・アンサンブル(グラスハープ、ベロフォン、グラスパンフルート)」のリーダー、イゴール・スカヤロフIgor Sklyarov氏の使用するグラスハープは、グラス・デュオ(平行変形)型を使用していると思われる(図6)。ヨーロッパのプレーヤーは、グラス・デュオ型の傾向があるようだ。

図6、クリスタル・トリオ・アンサンブルのグラスハープ

4)佐々木型配列
 1968年のブルーノ・ホフマンの演奏会で目にした配列を参考に、佐々木が試行錯誤の結果たどり着いた配列(平行四辺形)配列である。下から右斜め上へ向かって短2度半音)ずつ上げて4音並べ、続く半音上の音を右隣の最下段に並べて更にこれを繰り返すものである。その結果、右隣は長三度、右斜め下が短三度の関係となる(図7、8)。この配列では、メロディスケールが変形亀の子型のパターンとなること、和音が決まったパターンを形成すること、隣合った2個のグラスで長三度、短三度のハーモニーが片手で演奏出来ること、などの利点がある(図9)。さらに、3列でオクターブ(12音)をカバー出来るので、ピアノ鍵盤配列に比べて横幅を著しく短かくすることができ、楽器の持ち運び、セッティングが容易になるのは、大きな利点である。

図7、佐々木型配列

図8、佐々木製作のグラスハープ(改良型平行四辺形配列)

図9、佐々木型配列のスケールパターンとコードパターン

 以上の内容を纏めるに当たり、東邦音楽大学の田村治美氏から頂いたメール(2013年9月28日付け)の内容を参考させて頂いた。この場を借りて厚く御礼申し上げる。

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